成長に伴う血液性状の変化（3）血液生化学編②

摘要

子牛が出生してからの血液性状の変化についてまとめた，この連載も今回で最終回である。今回は血液生化学的所見の2回目で，前回，触れなかった糖質、脂質、電解質についてである。また，関連項目としてインスリン，コルチゾールについてもまとめてみた。出生直後のグルコース濃度は，分娩の状況によっても変化するが，一般的に低値（30－50mg／dL程度）を示す。出生直後は後述の高コルチゾールの影響で糖新生が盛んになり，次第にグルコース濃度は増加し，分娩後18時間くらいには正常子牛の一般的なグルコース濃度にまで増加する（90－110mg／dL）。このグルコース濃度の増加は，初乳を何時飲ませるかによって大きく影響を受ける。KURZ MMらの報告6）では，出生後1時間で初乳を飲ませると出生後3時間でグルコース濃度はピークとなるが，その後，緩やかに低下する。これに対して，初乳を出生後12時間で飲ませた個体の場合，出生後1時間をピークに以降，グルコース濃度は低下し，初乳投与があるまで低値である。いずれの群も12時間を過ぎてからはそれほど大きな変化がなく，ほぼ，正常子牛のグルコース濃度を示していることから，KURZ MMらは出生後8時間程度は膵機能や肝機能が完全に機能していないため，グルコース濃度に大きな変化があると推察している（図1）。