下部消化管疾患に対する内視鏡下手術 現状と展望

摘要

内視鏡下手術の対象となる消化器疾患のなかで下部消化管(小腸·大腸)疾患は胆嚢疾患(胆嚢摘出術)に次いで多く,消化器悪性疾患のなかでは大腸癌がもっとも多い.このように上部消化管に比較し下部消化管疾患に対する内視鏡下手術が普及している理由は,剥離操作が容易で血管処理が少ないこと,吻合は直腸手術を除けば器械吻合で容易に行えることなどが考えられる.大腸癌治療ガイドラインでは腹腔鏡手術はStage0-1(リンパ節転移のない深達度が筋層までにとどまる)結腸癌および上部直腸癌に対して推奨されているが,現在国内で進行中の内視鏡下手術と開腹手術の比較試験による長期成績の結果次第で,進行癌に対しても推奨されることが予想される.炎症性腸疾患に対する内視鏡下手術は.整容性の面で優れているものの大腸癌に対するほどには普及していない.