ホタテ具柱からのグリセリン筋の作製

摘要

筋肉を50％グリセリン溶液に浸すと，筋繊維の膜の脂質が溶け出すことにより膜構造が破壊され，収縮性のタンパタ質以外のタンパク質や低分子物質の多くがグリセリン中へ拡散して除去される．こうしてできたものをグリセリン筋という．グリセリン筋には筋繊維の構造や酵素活性は維持されており，ATPを与えると収縮が起こることが知られていて，筋収桁のモデルとして格好の教材である．しかし，グリセリン筋を用いた筋収縮に関する実験が，多くの「生物II」の教科書で取りあげられているが，生徒実験として実施している学校は，多くないようである．その原因の一つたは，教科書中で材料として扱われてぃるものが，カエルやザリガニまたはニワトリであり，ニワトリ（胸筋）を使用する以外は，生物材料の確保が困難であったり，生物体から筋肉を取り出すための解剖が面倒であるなど，グリセリン筋の作製には手間がかかるためであると考えられる．そこで，スーパーで入手しやすいホタテ貝柱を利用したグリセリン筋の簡単な作製方法と，筋収縮の実験を開発したので紹介する．