人支援型ロボットの開発における段階的な臨床試験プロセスの提案

摘要

以上で述べた問題に対し，我々は，工学特有の開発プロセスに即した臨床試験のガイドラインを策定することが，倫理審査の担当者と工学者の双方にとって有用であると考える．本稿では，その足がかりとして，図１に示しように人支援技術開発のための段階的な臨床試験プロセスを提案し，これを医薬品開発の治験（臨床試験）において標準的に採用されている時系列的な試験のプロセスとの対応付けを行う．これは，工学者に対して，被験者保護を目的とした一連の実験の段階的なプロセスを提示し，その中で個々の実験に対する倫理的要請を明確化することを目的としている． また，一連のプロセスの各段階における実験の目的を明確化することで，個々の実験で要請される目的の把握を容易にすることも目指している．さらに，倫理審査の側に対しても，工学者の行う実験の意図の理解を助け，倫理審査の場における「共通言語」としての役割を担うものとなることが期待される．本稿では，その基本的なアイデアを述べるにとどまるが，将来的には，こうした段階的なプロセスをもとに，被験者の安全性を十分に配慮しながらも工学の開発プロセスに即した実験プロトコルのガイドラインへと発展させることを目標としている．