ドイツ高速鉄道脱線事故の真相－技術者の責任論から(1)

摘要

1998年6月3日に14両編成のドイツ高速鉄道ICE-1が時速200km/hにて，ミュンヘン～ハンブルグ間を走行中，Eschede駅の手前550mにて脱線し，跨線橋の橋脚に激突して，101名の死者と105名の負傷者をもたらす大惨事になった．事故原因は，先頭客車のゴム弾性車輪が疲労破壊し脱線したことであった．この弾性車輪は事故の6年前に客車の乗り心地を改善させるために導入された新型車輪であり，高速鉄道に始めて採用された．導入当時には，世界の鉄道技術者の注目を集め，日本の新幹線でもその採用の可能性を検討するために，時速320km/hでの実車走行試験が行われた．しかし，予期されたほどの騒音低減効果がないことが判明し，その採用が見送られた経緯がある．この事故の責任を問われて，ドイツ鉄道の技術者2名と車輪メーカーの技術者1名がドイツ検察により刑事告発をされることとなった．いずれの被告も，弾性車輪の導入に当たって，設計·製造，保守点検部門の責任者であった．