新規蓄冷剤を用いた貯血式自己血の病院間搬送に向けての基礎的評価

摘要

群馬県では合同輸血療法委員会が中心となり，患者の転院に伴う貯血式自己血の搬送システムを構築した.搬送する時に問題となるのが製剤の温度管理であり2-6°Cを保つ必要がある.今回，3.3°Cを融点とする蓄冷剤（STS3,STS研究所）の性能評価と製剤搬送に利用できるかを検討した.STS3は-30°Cのフリ一ザ一で凍結したのちに4°C の冷蔵庫で保管することで140分後に2°Cまで温度が上昇し，赤血球製剤の保冷剤として使用できる状態になった. 製剤搬送についての検討では，搬送バッグを予冷する，冷凍後に保冷剤として使用可能な温度に上昇させた後の保管 期間を短くすることで最大289分の保冷が可能であった，群馬県内での搬送を想定した場合，最大3時間以内である ため，貯血式自己血を受け渡すためには十分な時間である.このことから，この蓄冷剤を用いることで貯血式自己血 の群馬県内の病院間搬送を安全に行える可能性が示された.