糖尿病性腎症向けエネルギー補給食品へのパラチノース~Rの応用

摘要

近年，糖尿病性腎症の透析症例に占める割合が高く，腎不全への進展防止対策が重要視されている。 対策の基本は，血糖，血圧の厳格なコントロールと適切なエネルギー補給および低蛋白療法である。 糖質でエネルギー補給を行う際には，できる限り血糖値の上昇が緩やかであることが望まれる。 天然の二糖類であるパラチノースは，4kcal／gの糖質であり，甘味の強さは砂糖（スクロース）の50％弱で，砂糖に比べ血中ブドウ糖への変換が穏やかである。 また，他の糖質と同時に摂取した場合にそれらの糖質による血糖値の上昇を抑制する効果も報告されている。本試験では，パラチノースを配合し，血糖値の上昇が濃やかなエネルギー補給用ゼリーを調製した。 砂糖を配合したゼリー（砂糖配合ゼリー）と，その砂糖の一部をパラチノースに置き換えたゼリー（パラチノース配合ゼリー）を調製した。 対照の砂糖配合ゼリー摂取後の血糖値は，摂取前借（97．9+-3．4mg／dL）より，摂取後30分にて頂値（125．4+-7．4mg／dL）を示す変動が見られた。 一方，パラチノース配合ゼリー摂取後の血糖値は，摂取後30分の頂値（124．3+-4．8mg／dL）では砂糖配合ゼリーに比し差はなかったが，摂取後60分において約17％の有意な減少が見られた（p＜0．05）。 血糖値変化のAUC（曲線下面積）においても，摂取後90分，120分において約3割の有意な減少が観察された（p＜0．05）。 血中インスリン濃度において，パラチノース配合ゼリーの値は砂糖配合ゼリーの値より摂取後60分で有意に低かった（p＜0．05）。 このことから，パラチノースを配合することで，血糖値上昇を軽度抑えたエネルギー補給食品の開発が可能であると考えられた。