「新しい科学哲学」と「精神医学の基本問題」ーシュナイターは正しかったか？一

摘要

人の生の展開は，元来，意味連続的であり，それゆえ他者にも了解可能である。臨 床家は病める患者に相対したとき，患者をより深く理解すベく，その主観的体験に耳を傾 ける。そして患者が病む在り方に応じて，臨床家の心に，医師としてなすべき対応が浮か hでくる。患者の体験に意味連続性の切断が観取されたとき，臨床家はそこに神経生物学 的異常を直観し，そこへの対応も別途，考える。だが，「生の展開における意味連続性の 切断」が，何故に「生物学的異常の侵入の証左である」と言えるのか。これを検証するには， 「新しい科学哲学」，「存在論的一元論?認識論的二元論」と「二相論」，「情報一意味連鎖」現 象の定義が必要である。これによれば，患者の体験における意味連続性の「切断」は，即， これと伴立する神経現象における「情報一意味連鎖」の「切断」であり，この「切断」をもたら すような生物学的現象をわれわれは「異常」に分類するのである。本稿ではさらに，精神病 理学の存在意義と今後の課題を述べた。