宮城県被災農村地域における土地利用整序化に向けた自治体の組織対応に関わる試みと教訓:宮城県気仙沼市杉ノ下地区および山元町山元東部地区の事例

摘要

東日本大震災により被災した沿岸部農村地域では，災 害復旧事業や復興交付金による農地基盤の復旧、整備を 通じた沿岸部の土地利用の再編が進められている。ここ では，事業の推進にあたり二つの大きな課題がある。第一の課題は，事業地区で並行して進められる複数の 災害復旧、復興関連事業の事業間調整である。これらの 事業は，一方の事業が他方の事業に影響することが多い。 例えば，海岸堤防の補修が近隣の災害復旧事業の進展を 規定する，二線堤としての道路整備が近隣のほ場整備に影響を与えるなどがその例である。復興を円滑に進める ためには，これら事業の依存関係と進涉を把握し.事業 間の調整を図る必要がある。第二の課題は，農地の復旧-整備を通じた土地利用の整序化である。ここではとりわ け防災集団移転促進事業（以下，防集）により取り残された非農用地の扱いが問題となる。防集では，移転促進 区域内の宅地が事業主体である市町村により買取りの対 象とされる。買い取られた土地は公有地になり，沿岸部 の再整備で活用される。他方，防集で買取り対象となら ない居住実績のない宅地やその他の民有地は，特別な対 応が取られない限りは.利用の目処が立たないままに沿 岸部に散在する形で取り残される。これら二つの課題へ の対応の成否は，事業の進涉だけでなく，地域の復興に も質的な影響を与えることが懸念されている。被災自治 体はこれら課題に対し試行錯誤的に対応を進めている。