黒毛和種における肉質格付成績と 脂肪酸組成の遺伝的関係

摘要

牛枝肉市場では、肉質、特に筋肉内脂肪の量を表す脂肪交雑（BMS)が枝肉価格に大 きく関係しており、生産者の収入に影響を及ぼ している。和牛の大きな特徴であるBMSは、 牛肉の輸入自由化を機に、育種改良や飼養管 理技術の改善のおかげで飛躍的に向上し、現 在では黒毛和種肥育牛のロース芯部分の粗脂 肪含量が50%を超える個体も少なくない。しか し、BMSに代表される脂肪含量の過度な増 加は、牛肉中のタンパク質の含量を減少させ、 タンパク質由来のアミノ酸やペプチドなど、美味 しさに関係する呈味成分を減少させることが知 られている。このことは、結果的に牛肉の美味 しさを損なうことにつながり、牛肉中の粗脂肪 含量が36%を超えると食味も低下するという報 告もあるひ]。このように、肉質に対する改良が、 消費者が望む美味しい牛肉という「消費者ニー ズ」と乖離してきていることは大きな問題であり、 早急な対応が求められているところである。