薬剤性横紋筋融解症

摘要

横紋筋融解症では，①筋組織壊死，②ミオグロビン尿，③尿細管閉塞，による急性腎障害が生じる.労作や感染，外傷で生じることが多く,病態の悪化に炎症機転も関与し，高熱や脱水，アシドーシスで増悪しやすし、.状態の把握には血清クレアチンキナ一ゼ(CK),カリウム（K),カルシウム（Ca)，クレアチニン（Cre)値などをモニターする.腎不全回避には大量輸液や強制利尿が有効であるが，重症腎不全に陥つた場合には透析も必要になる.薬剤性であってもコンパートメント症候群にも注意する.薬剤誘発機序には，①過量による直接 的な毒性，②低K血症などの電解質異常，③意識障害などに伴う二次的な障害，④アレルギー，がある.ミオパチ一を誘発する薬剤は横紋筋融解症をもたらしうる.悪性症候群や悪性高熱は過度の筋収縮で発熱も伴い， 横紋筋融解症をきたしゃすい.スタチンによる発症は製剤によって異なり，併用薬剤や食品との相互作用，併存疾患や遺伝的素因の関与も大きい.発症の契機となった薬剤に筋毒性があるとは限らない.通常量では基本的に まれな副作用であり，症例の集積が重要になる.本稿ではまれにしか起こらないことも可能なかぎり記載する.