SIにトレーサブルな分析方法の発掘を目指して/単色X線励起蛍光X線分析法

摘要

地球環境の保全や、円滑な国際貿易に関連して化学計測の国際的整合性が従来以上に重要になってきたことから、国際度量衡委員会は1993年に化学計測関係の諮問委員会、物質量諮問委員会（CCQM：Comite Consultatif pour la Quantite de Matiere）を創設することを決めた。 第1回CCQM会議は1995年に開かれ、SIにトレーサブルな結果を与えうる分析法を一次標準測定法（primary method of measurement）と呼び、重量分析、電量分析、滴定、同位体希釈質量分析法、凝固点降下法を選んだ。 その後新たにNMRもprimary methodであるという提案があり、国際比較を通してその検討が始まった。 第6回CCQM会議（2000年）の際にはprimary methodに関するシンポジウムが開かれ、新たにいくつかの提案があったが、中性子放射化分析の評判が特に高かった。 標準物質に特性値を付与するには、このような信頼性の高い分析方法を用いることが望ましい。 また、新たな方法の発掘が求められている。 我々は、単色X線励起蛍光X線分析法が新たな一次標準測定法であると考え、それを実証するための研究を行っている。 CCQMが与えた一次標準測定法の定義は次の通りである："一次標準測定法は最高の計量学的質を有し、その操作が完全に記述され、理解され、かつ不確かさがSI単位を用いて完全に記述される方法"。 一次標準測定法であるためには操作を測定方程式に書き下せる必要がある。例えば電量分析の場合には、n=It/F となる。 ここでnは物質量（単位はモル）、Iは電流、tは時間、Fはファラデー定数である。 Iやtは精密に測定可能な量でありダの値も十分な桁数で知られている。