生産·経営の改善を支援する新技術：農村環境のユニバーサルデザインの開発－高齢者や女性の視点で生産·生活環境を見直す

摘要

「ユニバーサルデザイソ」という言葉を聞いたことがある人も多いであろう。 テレビコマーシャルで近年よく宣伝されている回転槽を斜めにすることにより楽な姿勢で家事が出来るようにした洗濯機や，機能を省略することにより高齢者でも使いやすくした携帯電話機などで採用されているデザイソ手法がそれである。ユニバーサルデザイソとは「全ての年齢や能力の人々に対し，可能な限り最大限に使いやすい製品や環境のデザイソ」をさす言葉である。 一方，農村における農業生産環境や生活環境においても，人口の高齢化や過疎化により，これまで青壮年男性が中心に行っていた農作業を高齢者や女性が担うようになったり，都市からの援農ボランティアや定年帰農による新規就農者等の農業経験の浅い人たちが農業に参加したり，農村に暮らす機会が増加しており，それに対応した環境整備が求められている。しかしながら，現状での農村環境のバリアフリー化·ユニバーサルデザイン化は，公共施設における段差の解消や車イスでも利用可能な広さの確保といった障害をもつ人のための整備が中心となっている。もちろんそのこともユニバーサルデザイソ化の重要な課題の1つではあるが，高齢者や女性に対して農作業や日常の暮らしが楽に安全になるような環境整備や農業製品の開発は進んでいない。 ここでは，平成16年度より農村工学研究所が実施している農水省からの受託事業「農村生活総合調査研究事業」における「高齢農業者等の活動促進に資する環境整備のユニバーサルデザイソに関する調査研究」の研究成果から紹介する。