養殖技術講座一貝類の疾病一水生動物防疫のための取り組みとその課題

摘要

が国は、魚類、貝類をはじめとした多種多様な水産生物を養殖し、また資源増大のための種苗生産.放流を行っている。これらの養殖や種苗生産においては、しばしば魚病(魚類、甲殻類、軟体類すベての養殖動物の疾病を含む)、特に感染症が発生し被害が生じている。養殖における魚病被害額は平成6-7年、ろは年間3 o o億円近くに達していた。近年は約loo億円程度に低下し、被害率(養殖生産額全体に対する被害額の割合)も3%程度に留まるようになっているが、その主な原因はプリ養殖などの魚類養殖によるワクチンの普及によると考えられる。魚病被害の大きな要因である海外からの魚病の侵入についてみると、明治以降、ニジマスなどのサケ.マス類をはじめとして海外から多くの種類の種苗が導入され、それに伴い海外から新たな疾病が侵入した。その中には現在もわが国養殖業に甚大な被害をもたらしているものも見られるが、侵入した疾病の中には病勢の変化や治療や予防技術の向上により、侵入当初は大きな被害をもたらしたものの、現在では発生が限定的となつたものもある。