現実の金融市場へ近づく人工市場

摘要

人工市場とは，金融市場のマルチエージェンドモデル のことである． 金融市場はマルチエージェントシミュレ ーションに最も適した経済現象の一つである． まず，金 融市場では価格や取引高に関する詳細なデータを取得可 能であり，それらのデータをモデルの構築やシミュレー ション結果の評価に使うことがでるからである． 金融 市場データの分析によってい＜ つかの統計的な 見されたが，それらのメカニズムが明らかになっていな い． これらの特性はおそらく，市場参加間の相作用 によって創発した現象であると考えられる． 創発的現 の分析には，ミクロとマクロの関係をモデル化したマル チエージ；：ントシミュレーシaンが有効である． 次に， 金融市場のマルチエージェントモデルを構築すーる際に， エージェントの行動原が明らかである点もある． 基本 的に市場参加者は，収益を増やすという日的で取引を行 っている． ほかの社会経済現象では，各個人の行動選 の基礎となる効価値が多様で特定しにくい場合 も多い． さらに，エージェントの行動ルールを決す4 際に，実際の人間を対象とした実験経済学の知見を参考 にすることができる． このように，金融市場分野では。 マクロな市場データのレべルとミクロな個人行動データ のレべルの多層的なデータに基づいて，人工市場を構築 したり検証することができる．