金属と生体－最近注目の研究動向：亜鉛の生理作用と薬理作用

摘要

亜鉛欠乏症は，1934年にラットで初めて証明され，1963年には，ヒトの亜鉛欠乏症がイランで発見された．以来，亜鉛に関する研究が盛んに行われ，亜鉛の生理作用や薬理作用が精力的に究明されてきた．その結果，現在では，日常診療の現場で，亜鉛製剤を用いた薬物療法が行われている．一方，既に15世紀の初頭に，薬師パラケルサスは，“すべての化学物質には，生体にとって有用な作用と毒性がある”と指摘しているが，亜鉛も有害性が報告されている．本稿では，この様な背景を踏まえ，亜鉛の生理作用，薬理作用，毒性について，わかりやすく概説する．