超電導の応用-磁石を用いた水浄化

摘要

超電導の応用として一般によく知られているものにNMR（核磁気共鳴）装置、医療診断に用いられているMRI(磁気共鳴イメージング）装置、リニアモーターカーなどが挙げられる。残念ながら、現時点では超電導磁石を用いた磁気分離装置あるいは排水浄化システムはあまり知られていない。しかし最近、身近ですぐに役立つ超電導応用技術として磁気分離法による排水浄化が急速に脚光を浴びつつある。その理由ほ、近年、環境への関心が高まってきたことや排水基準の規制強化から新たな排水処理法を導入せざるを得ない状況に迫られていることなどが挙げられる。超電導高勾配磁気分維法は（1）大量処理（2000t/日以上）、（2）高速処理、（3）高度処理、（4）活性汚泥法に比して比較的安価、（5）少ない廃棄物、（6）省スペース（36m~2）などの利点を有するため、次世代型の排水浄化法として大いに期待されている。そこで我々は、再生紙工場から排出される廃水処理を目的として、超電導磁石を用いた高勾配磁気分離システムの開発を行った。 再生紙工場は大量の水（中規模の工場で5000t/日）を使用するとともに同量の廃水を排出する。最近、排出基準が強化（COD＜20ppm）され、その排出基準を満足するための費用がかさみ、経済的問題を抱えている。 この問題を解決できる処理法として磁気分離法が適していると考え、再生紙工場にも導入可能で（経済的にも成り立つ）超電導高勾配磁気分離システムを使用した廃水処理システムの開発に取り組んできた。 現在、日量2000トン級のシステムが完成し、工場に導入されてその性能評価試験の最終段階を迎えている。 本稿では、磁気分離法による排水浄化法の概安、原理、歴史、さらには実相段階に入った試験機の概要とその浄化性能について紹介する。