医療訴訟事例から学ぶ 医師に術後管理を誤った過失があるとして，損害賠償責任が認められた事例

摘要

今回の裁判例は，直腸癌の治療のため腹会陰式直腸 切断術を受けた患者が，術後，低酸素脳症のため四肢-体幹機能に高度障害が残存し，肺炎を併発して死亡し た事例において，医師に術後管理を誤つた過失がある として，損害賠償責任が認められた事例である（大阪地裁平成19年3月9日判決，判例時報1991号104頁). (1)患者（昭和9年生，女性）は，平成ほ年2月 27日，胸痛，背部痛を訴えて被告医師が開設する病 院（個人病院）を受診し，その後，下部直腸進行癌と 診断され，同年4月1日，同病院に入院し，同月10 日，同病院において腹会陰式直腸切断#f (以下「本件手術」という.）を受けた.