胃粘膜防御因子増強型胃炎·胃潰瘍治療薬のアスピリンおよびエタノール胃粘膜損傷の形成ならびに胃粘膜プロスタグランジンE_2産生能に対する作用

摘要

急性胃粘膜病変は,防御因子の減弱ならびにこれに伴って惹起される酸の逆拡散により形成されると考えられている。 本研究では胃粘膜防御因子増強作用を有する胃炎·胃潰瘍治療薬であるエカベトナトリウム(エカベト),スクラルフアート,テプレノン,レバミピドおよびマーズレン-Sのアスピリンおよびエタノールによる胃粘膜損傷の形成抑制作用を比較検討した。 さらに,胃粘膜防御因子の維持および調節に重要な役割を担っている胃粘膜プロスタグランジンE_2(PGE_2)に対するこれら薬物の作用についても併せて検討した。 エカベト(30-300mg/kg)はアスピリンおよびエタノールによる胃粘膜損傷の形成を有意に抑制すると共に,胃粘膜PGE_2産生を促進した。 スクラルフアートは300mg/kgの経口投与で両損傷の形成を有意に抑制し,内因性PGE_2産生に対しても促進傾向を示した。 スクラルフアートによる損傷形成抑制作用の効力は,エカベトの約1/10であった。 テプレノン,レバミピドおよびマーズレンSは300mg/kgの経口投与でもアスピリンおよびエタノールによる胃粘膜傷害ならびにPGE_2産生に対して有意な作用は示さなかった。 以上の結果から,今回検討した防御因子増強型胃炎·胃潰瘍治療薬の中では,エカベトが最も強い急性胃粘膜病変形成抑制作用ならびに胃粘膜PGE_2産生促進作用を有することが明らかとなった。