心の働きを胸の活動を通して見る--神経心理学から認知神経科学へ--

摘要

記憶，感情，言語という心の働きは脳の働きと深い関係にある．心にはいろいろな働きがあり，それぞれ脳の活動する部分が異なっている．このような脳の分業体制は1980年代にPETによって，脳の活動として見ることがでさるようになった．しかし，PETは放射性被曝があるのが欠点である．1990年代になって登場した機能的MRIはPETのような放射性被曝がなく，高い空間分解能をもち，個人レベルで脳の活動を測定することが可能である．さまざまな心の働きが営まれている様子を脳の異なる部分の活動としてとらえることが可能になったのである．本稿ではそのような例として，「しりとり」を行なっているとき脳のどの部分が活動するか，その再現性はどうかなどを機能的MRIによって研究した例を示す．また，左利きの人の場合についても言及する．