垂直磁気記録VI第5章 垂直磁気HDDへの挑戦

摘要

第3章，第4章と，やや理屈っぽい内容が続いた．ここで少し気分を変えて，第1章，第2葦に続き；冬の時代から実用期を迎えるに至るまでの経緯に話を戻す．1980年代後半からは，共に垂直磁気記録の研究を進めてくれた企業や仲間が次々と減り，垂直磁気記録の実用化が徐々に絶望の坂を転がり落ち始めている感すらあった.岩崎教授の停年退官（1990年）も目前にして，筆者も，垂直磁気記録の火を消さないためにどうすべきか，思い悩む日々であった．垂直磁気記録の可能性に疑念が抱かれ，多くの企業が研究開発から手を引いた時期，いわゆる筆者のいう冬の時代に，前章で述べた磁気記録シミュレータによる数々の解析結果は，垂直磁気記録の可能性を理論的に示してくれ，筆者らが自信をもって垂直磁気記録の研究開発を持続できた大きな支えになった．