住民のくらしを支える共同体の新たな構築: 行政に対する住民のィニシァチブを目指して

摘要

社会的孤立とは，生活に必要なモノや社会サービスに対する不足(結果的にはそうであっても)の状態ではなく，まずは人間関係の不足，つまり人間関係の先の存在が不足した状態である.ではそもそも人間関係とはどのように構築され，それらはどのように認識されていたのだろうか.ゲマインシャフトとゲゼルシャフトの理論1)は，テンニエスによって形作られたものである.ゲマインシャフトとは，血縁，地縁などによって結び付いている集団のことで，自然発生的に生成しかつその集団の存在自体に目的をもたないものである.他方のゲゼルシャフトとは職場などの団体，集団のことで，その集団自体がもつ特有の目的に沿って意図的に形成された集団である.その集団の構成員はその特有の目的にむかって行動するのである.資本主義社会の台頭と産業構造の発展において，人々のくらしは，これまでの血縁，地縁などによる結びつきの共同の暮らしから核家族化し，ゲマインシャフトのような自然発生的な集団は，小規模なものはあるにせよ，かっての構成員相互のくらしを支える共同体としての機能は失ったといえよう.