薬剤耐性菌の現状と最近の話題

摘要

薬剤耐性菌とは、ある化学療法薬の抗菌スぺ クトル内の菌種から出現し、その薬剤の常用量 ではその増殖を阻止されない菌株である。他か らの遺伝子移入やその菌株自身の遺伝子変異 で薬剤耐性を獲得したものや、薬剤が開発され た当初から抗菌力の及ばない自然耐性菌が存在する。MRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球 菌）で代表されるように、新たに開発された抗 生物質が生産され、広く使用されるようになる と、やがて耐性菌が出現する。人類は既知薬剤 を化学修飾することで耐性菌に対応するとい う歴史を繰り返してきた。その中で、メチシリ ンをはじめとした多くの抗生物質に関して、薬 剤耐性菌の耐性メカニズムが研究され、解明さ れてきた。このような薬剤耐性メカニズムの研 究をもとに、病原微生物に効果的に作用する薬 剤の開発研究が行われているが、薬剤耐性菌に 関する観点からの殺菌消毒剤についての研究 は依然少数である。