変形性股関節症における骨嚢胞成長メカニズムの考察－骨嚢胞の成長と周囲の骨再構築現象

摘要

難治性の骨疾患である変形性股関節症の進行のメカニズムの解明における重要な因子として，病態の進行過程で好発する骨嚢胞の成長過程の理解があげられる．骨嚢胞は，海綿骨内部に発生した空洞に骨髄液が蓄積した部位であり，経時的に肥大化して骨梁部を侵食するため，その成長は，骨の力学的適応を担う骨再構築現象と密接に関連することが考えられる．また，変形性股関節症における骨嚢胞は健常状態と異なる応力場において発生することが報告されていることから，これまでに本研究グループでは，変形性股関節症の骨嚢胞を伴う患者の有限要素モデルに対して，応力解析を行うことにより，骨嚢胞の有無がその周囲の応力分布に与える影響を検討した．さらに，骨嚢胞部位を挿入した簡易的な骨梁モデルに対して，骨再構築における形態変化を検討し，骨嚢胞の成長とその周囲の力学的環境変化の関連を示唆した．しかし，実際の骨嚢胞は，複雑な骨梁形態を有する海綿骨部に存在しているため，より詳細な検討には，海綿骨形態を反映したモデルに対する形態変化の検討が必要である．また，臨床観察において，骨嚢胞周囲の骨梁の密度は密と疎の部分があることが報告されており，骨嚢胞周囲の骨量（骨梁の密度）の差に起因して応力場が変化し，骨再構築の進行の変化が生じて骨嚢胞の成長に影響を与える可能性が考えられる．