パルス電界による酵母由来酵素抽出における印加回数の影響

摘要

近年、健康志向の高まりと共に酵素が注目を集めている。酵素とは、人間の体内において消化吸収や新陳代謝といった役割を担うタンパク質性の触媒であり、特に微生物由来の酵素は薬品や酵素食品の生産に利用されている。酵素は、微生物を粉砕した後、ろ過などを経ることで採取される。しかし、破砕した溶液には、細胞の断片や酵素以外の物質も多く含まれるため、酵素を精製するためには精密な分離を繰り返し行う必要がある。そのため生産コストの高さが課題となっている［1］。そこで近年では、高電圧パルス電界を利用した抽出方法が研究されている［2］。パルス電界は微生物の細胞膜内外の電位差により膜に絶縁破壊を起こし、細孔を形成するため、これを利用することで細胞膜に開いた穴から酵素だけを取り出すことができれば、従来の分離工程を簡略化することで生産コストを抑えられる。本研究では印加回数をパラメータとして、酵母に対してパルス電界を印加することで酵素の抽出を試みた。