スパッタリング法によるNd-Fe-B系異方性ナノコンポジット磁石膜の作製

摘要

加熱基板上に成膜することで，Nd_2Fe_(14)B結晶を厚さ（面垂直）方向に配向させた“Nd-Fe-B系異方性磁石膜”を作製する手法が報告されている．この基板加熱による異方性磁石作製手法では，結晶化速度の制御性等の点で，ナノコンポジット磁石への応用は困難であると考えられる．一方，奥田らは360°C程度に加熱した基板上にNd-FeB膜を形成し，さらに熱処理を施すことによって約400nmの結晶からなる異方性磁石を作製する手法を報告している．異方性ナノコンポジット磁石への応用を鑑みた場合，“熱処理過程による粒径制御”が可能となることから，奥田らの手法は基板加熱のみで作製する手法よりも有効な手法であると考えられる．また，垂直配向に関しては，加熱基板上にTaとNd-Fe-Bの多層膜を形成することで実現されるという報告もある．本稿では，以上の報告結果を踏まえ，①基板加熱無し，②Nd-Fe-B/Taの多層膜形成，③熱処理による結晶化，に関してNdとFeの比率等の検討を行い，異方性Nd-Fe-B/α-Feナノコンポジット磁石作製を示唆する結果を得たので，それについて報告する．