前方視界および後方視界における短時間での距離感把握に関する検討

摘要

自動車運転において，前方視界及び後方視界を含む空間の正確な把握は，安全かづ快適なドライビングの実現にとって重要な要件の一つである．現状では，前方視界はウインドウを通した直接的な視認に，また後方視界はルームミラーやサイドミラーを通した間接的な視認によるのが一般的だが，近年はミラーレス車の開発も進hでおり，国土交通省からも，道路運送車両法が定める自動車の保安基準の改定（2016年6月）により，乗用車やバス，トラックに備わるすべてのミラーをカメラとモニタで代用することを認める方針が示されている．カメラとモニタによる方法は，例えば，これまで直接視認やミラーを通した間接視認だけでは得ることができなかった視界を提示するなど，自由度が高く，ドライバが得る自車周辺の視覚情報をより強化できる可能性がある．一方，このような自由度の向上によって新たな検討点となることの一つが，どのような視界をドライバに獲得させることが正確な空間把握において効果的か，ということである．カメラとモニタはハードウェアにすぎず，これを通してドライバに与える情報如何によっては，ドライビングの安全性，快適性を向上させも低下させもする．