人体有限要素モデルによる肋骨骨折と胸部加速度および胸部変形の関係の検討

摘要

本研究で著者らは人体の肋骨骨折とATD の胸部傷害指標を同一条件で比較することを目的にFE シミュレーションモデルによる解析をおこなった．本研究では胸部最大減速度と胸部最大変形にトレードオフが生じる可能性がある状況として，小型乗用車の正面衝突において衝突エネルギーが比較的大きく，かつエアバッグの寄与が小さい状態を想定した．はじめにハイブリッドIII（以降，HY3 と記す）ATD のFE モデルを用いてパラメータスタディをおこない，HY3 ATD モデルの胸部最大減速度と胸部最大変形が同じ傾向を示す衝突条件，および異なった傾向を示す衝突条件を探索した．次にFE モデルによって探索した同一の衝突条件で75 歳の成人男性の体形と材料特性を再現した人体FE モデル（以降，高齢者モデルと記す）でシミュレーションをおこない，それぞれの衝突条件における肋骨骨折発生の状況を調べた．