在室者の調整行動を利用したアクティブ空調制御システムによる室内環境と省エネ性能に関する研究 その1 SaaS型BEMSの概要と夏期における空調制御結果

摘要

エネルギーの節約と地球温暖化ガスの低減は，世界的な提言である．特に，日本では，東日本大震災以降，この対策は急務となっており，社会全体の省エネを進めるため，商業施設，オフィスビルなどの多様な施設において，新築，既存，大規模，小規模にかかわらず取り組まれている．省エネ手法には，自然エネルギーの利用，設備改修，運用面での効率化など様々なものがあるが，設備投資を必要としない既存設備を利用した省エネが望ましい．しかし，効率的な運用を実施するために必要なBEMS（Building Energy Management System）のほとhどが大規模向けであり，また，比較的広い空間の環境を均一に調整するため，中小のオフィスビル，商業施設，店舗や賃貸ビルに入居しているテナントオフィスには対応できておらず，いまだ広く普及するに至っていない．そこで，本研究では，既存の中小規模建築にも容易に設置でき，また，省エネによる室内環境の悪化を低減可能なアクティブ空調制御システムを開発した．このシステムは，インターネットを利用して遠隔からの設備機器を管理·運用できるSaaS型BEMS（以下S－BEMS）を用い，人の調整行動である空調のON／OFF行動に基づいた不快度により空調を制御する．本報では，このシステムの特徴と中規模ビル内のオフィスおける夏期の空調制御結果について述べる．