Wikiを用いた学術知識の集約

摘要

本稿で紹介するのは生物情報学、いわゆるバイオインフォマティクスと呼ばれる分野である。簡単に紹介すればバイオロジーとインフォマティクスの融合分野だが、正確には生命現象の解明が目的であり、分子生物学の範疇だろう。つまり情報学の視点で解く分子生物学である。しかし中高で数学·物理の嫌いな生徒は生物·地学を履修する現実が示唆するように、生物学と情報学（または数学）は学問のスタイルが異なり、大変相性が悪い。そもそも生物学と情報学は融合できるのだろうか。このギャップを反映してか、日本における生物情報学の研究者は欧米に比較して数が少ない。分野を越境すること自体が未だにタブー視される。その一方で大量情報の波は生物学にも押し寄せており、オミックスの情報管理は手作業では不可能である。このため統合データベース事業等のプロジェクトが生物学の情報化を促してはいるが、厳しい予算で壮大な事業を任されており、生物学の現場をうまくサポートしているとはいえない。