ネマティック液晶添加FLCの物性調査

摘要

強誘電性液晶(FLC：Ferroelectric Liquid Crystal )は従来のディスプレイに使用されているネマティック液晶に比べ約1000倍の応答速度と広い視野角などの特色を有しており,次世代液晶ディスプレイ材料として期待されている 1).この強誘電性液晶がもつ種々の物性のうち,チルト角はFLCの光制御能力と応答速度に影響を及ぼす重要な物性である.先行研究では液晶BH-8001N(DIC)とカイラル剤CM33(チッソ石油化学)を用いて新規のFLCを作製し,チルト角のカイラル剤濃度依存性を調査した.その結果,カイラル剤濃度を増やすことでチルト角は増大するが,SmA-SmC*相転移温度c低下することが判明した.そこで,高い流動性と透明点NIもつネマティック液晶(NLC：Nematic Liquid Crystal)であるMLC2062(メルク)をFLCに添加することで,チルト角の増大とSmA-SmC*相転移温度の上昇が期待できる.本研究では液晶BH-8001N,カイラル剤CM33,NLC(5CBまたはMLC2062)の3成分から成るネマティック液晶添加FLCを作製した.また,本研究の目的はネマティック液晶添加FLCの物性調査(テクスチャー観察, SmA-SmC*相転移温度測定,チルト角測定)を行い,これら物性値のネマティック液晶濃度および液晶種の依存性を明らかにすることである.