清家清設計「斎藤助教授の家」の原寸大模型の制作

摘要

1.はじめに　本稿では清家清設計の「斎藤助教授の家」（1952年）の原寸大模型の制作の過程を紹介する。再現にあたり、建物の各部寸法や素材の仕上げ、色彩には不明な点が多かったが、収集した資料からこれらを割り出す過程において、建物の設計プロセスを追体験することができ、作品の特徴や設計意図に気づくことができた。本稿は、まず躯体ゃ造作材における木部の寸法、納まりについて述べ、仕上げの色彩については別稿（小畑俊介氏）に譲る。2017年7月から東京の国立近代美術館で開催された「日本の家1945年以降の建築と暮らし」展では、戦後の日本の住宅作品77点の展示を通して、日本の戦後住宅の系譜が紹介された。この展覧会は、2016年11月のMAXXI国立21世紀美術館（ローマ）を皮切りに、バービカン·センター（ロンドン）、東京国立近代美術館（東京）を巡回するもので、作品の図面·写真·模型に加え、各会場でそれぞれ1つ原寸大模型が制作·展示された~(注1)。東京国立近代美術館では展示室の天井高さが3.7mであり、戦後日本の住宅作品を紹介するには木造住宅が好ましいなどの条件により、展覧会で選定された住宅作品の中から木造平屋の「斎藤助教授の家」が原寸大模型として選定された。東京国立近代美術館での展示会場デザインをアトリエ·ワン（塚本由晴、シモーナ.フェラーリ）が担当し、原寸大模型の設計·監理を筆者（能作文徳）が担当し、施工をェ藤工務店が担当した。また、山﨑鯛介（東京工業大学准教授)、小畑俊介（同博士課程）が資料収集·分析など学術協力を行った。原寸大模型の設計期間は2017年3月～5月、施工期間は同年5月～7月だつた。原寸大模型を制作するにあたり以下の資料を参考にした。