慣性質量要素を利用した渡り配管の地震応答低減手法

摘要

近年の評価用地震動増大に対応するため，原子力分野において免震プラントが検討されている．免震プラントのコンセプトの一つとして，安全上重要度が高い原子炉建屋のみを免震建屋とし，タービン建屋を非免震建屋とする構成が考えられる．本構成を採用した際の課題として渡り配管の地震時健全性維持が挙げられる．渡り配管は図1 に示すように免震建屋と非免震建屋を繋ぐ配管であり，原子力プラントにおいては主蒸気配管や給水系配管がこれに相当する．渡り配管は地震時に生じる免震建屋と非免震建屋間の相対変位（免震変位）を吸収するため，長尺化された設計となっている．長尺化により免震変位の吸収が可能となる一方，配管自身は免震振動数より高い振動数域（地震波の卓越振動数域）に複数の共振振動数を有するため共振が生じる．一般的な配管は，剛に支持することで共振振動数が地震波の卓越周波数成分よりも高くなるよう設計し，地震波との共振を避け，耐震性を確保している．しかし，渡り配管を剛に支持すると，免震の変位を拘束することになり，配管に過大な荷重が生じてしまう．このため，渡り配管に対しては異なる支持方法が必要となる．