糖尿病における腸内細菌叢異常

摘要

ヒ卜の腸管内では多種,多様な細菌が絶えず增殖を続 け，これらは腸内細菌と呼ばれ，個々の菌が集まって 複雑な微生物生態系を構築している。この微生物群は 「腸内フローラ」または，「腸内細菌叢」と称され，食事 内容の変化でその組成は影罾を受けるとされている。 特に高脂肪食の摂取では腸内細菌叢のバランス異常(dysbiosis)を生じ，腸管でのバリア一機能の低下，つ まり透過性の亢進をきたす。透過性の亢進は腸内細菌及び，その成分の血中への移行（bacterialtranslocation) をもたらし，炎症性サイ卜力インの坩加を介して，微小な慢性炎症を宿主であるヒ卜に惹起し，肥満，糖尿病のィンスリン抵抗性の一因となっているという仮説が提唱されている（図）。