米国における通信記録の保管のあり方に関する法規律とその含意－日本国憲法上の通信の秘密不可侵の法規範に対する示唆

摘要

個々の通信記録の保管及びそれに対する公権力のアクセス又は関与のあり方については、憲法21集2項後段の規定に基づく通信の秘密の保護のあり方の一環として位置づけられる問題であると考えられる。この問題をひもとくに当たり参考となるのが、米国において米国憲法修正4条に基づく保護を補完する観点を踏まえて制定された電子通信プライバシー法の一端を占める「通信記録保管法」及びその規律内容をめぐる豊富な議論である。当該議論から、①公権力が通信管理主体の保管する通信記録の提出を求める場合には、その他の主体に対して同様の求めを行う場合に比べ、より厳格な手続きが求められるということ、②通信管理主体による通信記録の保管目的について、それが通信事業の健全な運営ないし通信役務の適切な提供に必要と認められる場合とそれ以外の場合とで、保管された情報の任意の知得等を当該主体が行い得る範囲が異なる可能性があるということが示唆される。