人医学の立場からがん治療における分子標的薬の歴史

摘要

進行がん患者に対しては，薬物療法が治療の中心的役割を 果たす。従来の細胞障害性抗がん薬に加えて，現在では分子標 的薬，免疫チェックポイント阻害薬などが一般診療でも用い られている。Stanley Cohenは1962年に上皮成長因子（epidermal growth factor ： EGF)を同定した"。この業績は理論的な抗 がん薬開発の嚆矢となった。1980年には，ヒト上皮成長因子 受容体(EGF receptor ： EGFR)を分離し2),1984年にはヒト 遺伝子配列が決定された3)。 Cohenは成長因子の発見 に関する業績で1986年にノ一 ベル医学生理学賞を受賞した。 筆者が1995~1996年にかけて滞在した米国テネシー州ナツ シュビルのバンダービルト大学の廊下にProfessor Cohenの レリーフが飾られていた。Cohenは1959~1999年までバン ダ一ビルト大学に勤務し，2020年2月に97歳で亡くなつた。