電子豊富な二核ルテニウム錯体を触媒としたピリジンおよび環状アミンの変換反応

摘要

これまで鈴木寛治東京工業大学名誉教授とともに，遷移金属ポリヒドリドクラスターの多核反応場で繰り広げられる様々な分子変換反応について，アル力ンを含む炭化水素との反応を中心に系統的に研究を進め，Cp*Ruユニットによって構成される電子豊富な多金属反応場では，アルカンのC-H結合のみならずC-C結合の開裂と再結合を含む特異な変換反応が進行することを明らかにしてきた。特に，三核ルテニウム錯体1と直鎖アルカンとの反応では，スキ一厶1に示すように，クラスターからの脱水素を鍵とする多段階の過程を経てcloso型ルテナシクロペン夕ジェン錯体2が選択的に得られることを明らかにした。これら一連の反応は，「隣接する金属と炭化水素配位子との間での多点的な相互作用」と「金属と配位子間でのスムーズなヒドリドの分子内移動」といった，ポリヒドリドクラスターの特徴を存分に活かすことで達成されたものである。