セレノフェン水素化脱セレン反応をプローブとして用いたCo-Mo硫化物触媒の活性サイト構造と触媒特性の解析

摘要

石油中に含まれる硫黄分は，燃焼による大気汚染ガスの発生や後段プロセスの被毒といった問題を引き起こすため，石油精製の過程で水素化脱硫（Hydrodesulfurization，HDS）処理によって除去されている。現在HDS触媒として，Co-Mo系複合硫化物触媒が主に用いられており，その活性種としてCo-Mo-S相と呼ばれる活性構造が提唱されているが，その反応機構および活性サイト構造の詳細については，未知の部分が多く残されている。脱硫触媒のさらなる活性向上や，機能の精密制御のためには水素化脱硫活性サイトの性質について，さらなる知見が必要である。特に金属硫化物触媒と反応物中の硫黄原子の交換は，HDS反応において重要な過程であり，これまでにS~(35)同位体を利用した研究によってその詳細を明らかにする試みがなされている。また，チオフェンの同族体であるセレノフェンを用いて反応を行い，触媒に取り込まれたセレン原子の量から触妹中の硫黄のmobilityを調べた研究が報告されている。この手法をCo-Mo系触媒に適用すれば，触媒中の硫黄原子がどの程度セレン原子と交換するか，すなわち硫黄交換容量を調べることができる。