無機材料の固体間反応

摘要

無機材料の固体-固体反応は，耐火物の製造において重 要な化学反応である。耐火物には，数多くの種類が存在し， その製造方法も多種多様である。耐火物を構成する主要 な酸化物として.Al_2O_3やSiO_2に加えて.MgO, CaO, Cr_2O_3, ZrO_2などがある。耐火物の製造工程においては. これらの原材料を混合?混練し，高温で焼成する工程が含 まれている。この工程では，高温において原材料同士が反 応し，複合酸化物が生成する場合があり，製造された耐火 物には，原材料に加えて固体間反応による反応生成物も含 まれる。また.スピネル系の耐火物の製造においては.原 材料そのものを固体間反応で製造することも多い。このよ うな固体間反応は.耐火物の製造工程に限らず，耐火物が 再び高温に曝される使用環境においても起こる。使用時に 生成した複合酸化物は，耐火物の微細構造やその性質を変 化させる。そのため，耐火物における固体間反応の研究も 数多く行われている。本稿では.耐火物の製造において重 要となる無機材料の固体-固体反応（固体間反応）に着目 し，固体間反応の素過程や反応全体を支配する拡散現象に ついて概観する。MgO-Al_2O_3系などのスピネルが耐火物の 分野では数多く取り扱われていることから.本稿では.こ れらの系を総称したAO-B_2O_3系の固体間反応を取り上げ る。