現在,世界中で大きな問題となっている地球温暖化は,気温の上昇だけではなく地表面の温度も上昇させている。 この地表面の温度上昇の影響は地下へと伝播し,地下深部からの熟流量と岩石の熱伝導率で決まる地下温度(ここでは「バックグラウンドの湿度」と呼ぶ)に対する温度揮乱として記録される.地下水流動がない場合,地表面湿度変化の影響は熱伝導のみで地下に伝播する.Harris and Chapman(1997)は,岩石の熱拡散率が1×10~(-6)m~2/sの半無限媒体の表面でパルス状の温度変化があった場合を想定し,地下の温度接乱が現れる深度を計算した.その結果,10年,100年および1,000年後に温度擾乱の最大値は地表面からそれぞれ25m,80mおよび250mの深さに現れることを示した.この計算の結果は,深さ数百mまでの地下温度は過去千年間の地表面温度変化の情報を記録する潜在能力があることを示している.その一方で,熱伝導で地表面温度の変化が地下へ伝播するとき,深さが増加するに従ってその振幅が減衰するという特徴がある.特に短周期の変動ほど減衰しやすいため,地下の温度擾乱は地表面温度変化の長期傾向に関する情報を有していると考えられる.
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