船舶における冷凍冷蔵·空調用冷媒の現状および将来動向

摘要

近年の船舶において漁獲品の凍結·低温保存·輸送，船室の冷暖房や電子機器の冷却，そして加工食品の輸送は重要な項目である．これらに使用される機器の冷凍サイクルとその作動流体である冷媒の間には深いつながりがあって，別々に切り離して考えることはできない．特に，冷媒は物質によって異なる性質（物性）を有するので，用途に適した冷媒を選定し，この物性を活かすようにサイクルや機器を設計する必要がある．しかし，近年の冷媒を取巻く環境は著しく変化しており，船舶用冷凍機器においてもそれに応じて技術の見直しが必要である．先ずはオゾン層破壊や地球温暖化の環境問題，さらには二酸化炭素排出規制やエネルギーに関する諸問題を緩和するように努めるべきである．そのためには，環境に優しい冷媒の使用，そして成績係数（=冷凍空調機器の効率）が高く，冷媒の回収が行ないやすい機器の開発が望まれる．そこで本報では，船舶における冷凍冷蔵や空調用冷媒の現状を概説し，将来使用される冷媒やその使用環境を予測して，これら諸問題の緩和に役立つ指針を提示できるよう試みる．