酸化物の抑制炉

摘要

2015年12月にフランス·パリで開催された国連気候変動枠組条約会議でCOP21が採択され、2050年にはCO_2排出量を2000年に比べ半減することになっている。よって、鋳造業界においてもCO_2排出量削減·低燃費化の対策に取り組まなければならない。近年、自動車、運送機器などの軽量化により、Al合金の使用量が増える傾向にある。日本国内では平成22～平成26年の間、Al合金鋳物は製品重量として年間38万～42万t、ダイカスト鋳物は約年間93万～100万t生産しており、合計年間131万～142万t製造している。歩留りを60%と計算すると、溶解量は約218万～237万tにのぼる。Al合金の大量の溶解は反射炉型が主流であったが、70年代から燃焼ガスの衝突噴流加熱法による強制対流伝熱を特徴とした急速溶解炉（下記従来炉）が開発され、今に至っている。しかし、このタイプの炉はエアリッチでガス燃焼を制御するため、溶解·保持雰囲気中の酸素濃度が高い。更に、溶解·保持の雰囲気温度が高いので、Al酸化ロスが3～5%である弱点がある。日本国内でのAl合金の年間溶解量からみると溶解歩留りを1%向上することだけで、年間Al合金インゴットを約2.1万～2.3万tを節約することができる。本文ではAl合金溶解·保持過程での酸化のメカニズムを述べると共に、Al合金の酸化を極端に減らした「酸化物の抑制炉」の開発に関して報告する。この炉の開発により、溶解·保持過程でのAl合金の酸化率を1%以下に抑制することができた。