中小企業における両利き経営に関する考察

摘要

既存の知識やノウハウ、経験などを活用して事業の改善を図ること（「知の活用／深化」）と不確実性の高い新規事業を探索すること（「知の探索」）の両方を追及する「両利きの経営」を行う企業ほど業績が高いことが、多くの実証研究で示されている。知の活用／深化は現在の収益性向上につながり、知の探索は未来の収益性確保につながる。両利きの経営が高い業績に繋がる理由は、両方の活動の結果から、イノベーションの本質である「知と知の組み合わせにより新しい知を生み出せている」ためであると考えられている。しかし、一般的に企業には、事業の成熟に伴い、知の深化に偏る（知の深化にリソースを多く配分する）傾向がある（「サクセストラップ」という）。その原因として、「人や組織の近視眼的な特性」、「社会的信頼の獲得を狙った事業の安定化志向」、「成功体験への固執」等が挙げられている。