ひび割れを有するコンクリートの拡散係数評価式への塩分浸透影響範囲の適用効果

摘要

本研究は，ひび割れ周辺の実構造物サイズの供試体を用いたJSCE G 572に準じた塩分浸せき試験によって，ひび割れから垂直方向への塩分浸透特性を明らかにし，コンクリート面積に塩分浸透影響範囲を適用するのに必要なαの値について検討した．そして，その結果を用いたひび割れを考慮した拡散係数の数値解析によって，塩分浸透影響範囲のコンクリート面積への適用の効果を検討した．さらに，著者の研究で検討していないひび割れに関する条件として，塩分侵入ひび割れ面数s_(cr)のαへの影響についても併せて検討する．これは，図4に示すように，ひび割れを有するコンクリート面からひび割れを介して塩分がコンクリート中に浸透するケースを考えた場合，実構造物においては，現実的に鉄筋に対して1面からだけではなく複数のひび割れ面からの塩分侵入が当然だからである．それはすなわち，外部からコンクリート内部への塩分の供給量が増加することによる，ひび割れから垂直方向への塩分浸透量の増加を意味するものであり，当然その影響もαに考慮する必要があると考えられる．