CD4サイレンサーによるエピジェネティックサイレンシング

摘要

近年クロマチン構造の修飾を介したエピジェネティックな遺伝子発現制御機構が注目を集めているが，高等動物の分化過程において個々の遺伝子座が特定のクロマチン修飾を受ける機構はいまだ明らかではない．CD4遺伝子はCD4サイレンサーの機能を介し，異なる胸腺細胞分化段階で異なる様式で転写抑制を受ける．特に，細胞傷害性系列への分化を運命決定されたT細胞においては，エピジェネティックCD4サイレンシングが確立され，CD4サイレンサー非依存的にCD4遺伝子の不活性化状態が維持される．本稿では，CD4サイレンシングをモデルに，特異的な遺伝子座が分化段階かつ系列特異的に不活性化される機構を紹介したい．