トホロジカル結晶絶縁体における対称性の破れとディラック電子の質量

摘要

われわれの身の回りにある材料や物質が多彩な電子物性を示す主な原因は，さまざまな原子配列を有する結晶がもたらすバンド構造の多様佳にある.より良い特性を示す材料や，より面白い現象を示す物質を探求するには，原子配列とバンド構造を相補的に理解することが基本になることは言うまでもない.さらに，最近では表面?界面，単原子層，ェッジ，相分離状態，ドメイン構造などが新物性発現の舞台になることが多く，局所的な観点で材料や物質を理解する重要性も増している.試料全体の性質を捉えるような多くの実験手法ではこのような課題に明確な答えを与えることが困難となるが，走査トンネル頓微鏡（STM;Scanningtunneling Microscope)を用いることで直接的なアブローチが可能である.最近の先端STM計測の最大の意義は，原子配列のみならず，電子の波数(k)の情報を同時に引き出せることにある，また，電子のヱネルギ一空間における情報も，パイアス電圧の調整によって非占有側と占有側の領域を包括的に調べることができる.さらに，強磁場中での測定でランダウ量子化準位（LL:Landaulevel)の直接観測も可能である.これらの能力を最大限に活かした実験を設計することで，新物質の重要データがSTMを用いた実験から見いだ,される例は近年ますます増加している.