放射線育種研究の現状と将来-アジアでの飛躍的な発展-

摘要

突然変異育種研究分野における最近のニュースは、2008年8月、IAEAウイーン国際センターにおいて、IAEA/FAOが主催し、インドのバッバ原子力研究センターや農業生物資源研究所などの協賛で、「植物の誘発突然変異に関する国際シンポジウム」が開催されたことである。参加者は83力国から465名であり、世界の関心の高さが理解されると思う。ちなみに、中国から53名、インド50名、米国25名、ドイツ18名に次いで、日本から16名の参加があった。突然変異育種や育種研究の先導的な研究者が一堂に会し、4日間にわたり突然変異育種の歴史、遺伝的変異の拡大と作物の栽培化、植物の変異誘発とDNA損傷?修復、環境や病虫害耐性の誘発、作物の品質改変、突然変異誘発新技術、ゲノム手法による変異の高度獲得技術、栄養繁殖や種子繁殖の突然変異育種などが議論された。突然変異育種は「古くさい」技術と考える研究者もいるかもしれないが、ゲノム解読を終えたイネを中心にこれらの情報を駆使した「分子突然変異育種」ともいうべき放射線育種研究の新たな時代が今まさに始まろうとしている。