雑種に起源する固有種：アポイカンバと北海道アポイ岳の高山植生の衰退

摘要

アポイカンバは，北海道アポイ岳に固有の棲性カバノキの4倍体種である．核DNAの塩基配列から，本種は，ダケカンバと北海道の2か所の湿原だけに分布するヤチカンパとの雑種に起源すると考えられる．アポイカンバが生育する山頂付近にはダケカンバも生育し，両種間の生殖隔離は完全ではない"また，アポイカンバの種子の充実率と発芽率は近傍の同種他個体数の減少とともに低下した凡　 近年，アポイ岳の高山植生が森林へ遷移しつつあり，ダケカンバの個体数の増加による種問交雑率の上昇と，アポイカンバの個体数と生育面積の減少による種子生産数と実生更新数の低下が危憤される．