明治期?産業遺構の鋼材遺物の精錬法の推定に関する考察(前編）

摘要

現在，日本の明治期の産業遺構の保存が進められており，2013年に富岡製糸工場の世界遺産指定に続いて，日本の産業革命に大きな役割を果たした官営八幡製鉄所や長崎造船所等が2015年6月に世界遺産への登録が決定された.同時に最近では，明治期の煉瓦倉庫，橋梁，駅舎，鉄道，灯台，海堡等の様々な場所の建造物や構造物で使川された鉄鋼材料（以降，鋼材と記述）が調査されている，こうした動きの中で土木や建築はじめ金诚関係の研究者や技術から，その鋼材の粘鍊方法はじめ時代，場所を推定したいとの要望が出てきている.それらを推定するためには，鋼材そのものから得られる様々な特性値に加えて関係する技術的な情報の活用が必要である.従来の報告書には明治期の産業遺構の中で使用された鋼材の精錬方法等については，やや定性的な検討が多く，鋼材の成分情報を取り入れ精練法の特徴を考慮し定量的に推定した論文は少ない.そこで本小論では，まず精錬法の推定への鋼材成分評価の有効性，明治期における各種精錬法，当精錬法と成分の原理的関係を明確にして，次に具体的な明治期遗構の鋼W事例について精鍊法を推定し，当結果が近代精錬法変遷と矛盾しないことを述べる.この解析によって，間連分野で鋼材調査を進めている研究荇や技術者に「成分による明治期鋼材の精錬法推定マニュアル」を提示することを試みるものとする.