研究分野とテーマ， そして井戸堀りの日々畠山立子

摘要

フランスの詩人アラゴン（Louis Aragon,1897?1982)が詩“エルザの瞳”の中で，恋人の瞳は深い井戸のようだと謳ったとき，高校牛:であった筆者は，何とか原文でこの詩を読みたいと思い，フランス語の入門書を贖った.すべての文学のジャンルの中で詩ほど難しいものはない.すぐ折してフランス語は放棄された.筆者のフランス語はのちに，科学文献のタイトルを読むのに少しは役に立ったという，何ともわびしい結末となった.閑話休題，科学者たちはエルザの晻に溺れることはないが，自分で掘った“自分の研究分野”という井戸の中で溺れかけている人が多い.卒業論文のテーマ，修士論文のテーマのドに，あるかもしれない水脈を探して，そのまま掘り進hでしまい，井戸の底を死ぬまで凌うことになる人もいる.科学者たちはどのようにして，向分の研究テーマに出会うのであろうか.本稿では，笨者の周辺の研究者たちのテーマ選びについて述べる.